筆者は介護の現場で18年働き、そのうち8年を認知症対応棟で過ごしました。認知症ケアは、きれいごとだけでは語れません。夜勤は人が少なく、目の前の一人に付き添いたくても、ほかの方のケアが待っています。
「もっと寄り添いたいのに、時間がない」。この矛盾に、AIは役に立つのでしょうか。先に結論を書くと、筆者がAIに一番支えてほしいのは、観察と記録と通知、そして現場の雰囲気に左右されやすい「いいケアの引き継ぎ」です。その理由を、現場で見てきたことから順にお話しします。
不穏には、前ぶれがある
認知症の方の不穏や興奮は、突然起きるように見えて、たいていは前ぶれがあります。気づく手がかりになったのは、表情や時間帯でした。ほかにも、目つき、前の晩の睡眠、便秘などの体調を見ていました。いつもより目つきが硬い、昨夜あまり眠れていない、夕方が近い。こうした小さな変化が重なったとき、不穏が起きやすくなります。
そして意外と大きいのが、その直前に関わった人の対応です。同じ方でも、直前の声かけが合っていたかどうかで、その後の落ち着き方がまるで変わります。不穏は本人の中だけで起きているのではなく、関わる側との間で起きている面もあるのです。
前ぶれが分かれば、前もって防げる
前ぶれが見えるということは、手を打てる時間があるということでもあります。不穏が起きてから落ち着いてもらうより、起きにくい一日をつくるほうが、本人にも職員にもずっと負担が少なくて済みます。
効果を感じたのは、一日の流れそのものを整えることでした。午前中からしっかり目が覚めるように過ごしてもらい、日中はその方に合った余暇で適度に体と頭を使ってもらう。そうした一日をつくることで、不穏を前もって防げることがありました。前ぶれに気づくことと、一日の過ごし方を整えることは、セットで考えるのが大切だと感じています。
夜勤で一番つらかったのは、急変
夜勤はどれも大変ですが、一番つらかったのは、急変でした。少ない人数のなかで、判断も対応も急がれます。
認知症対応棟でとくに大変だったのは、眠れない方への対応でもありました。眠れずに歩き回る方の中には、転倒のリスクが高い方もいます。目を離したくない。でも、おむつ交換の時間は待ってくれません。
そんなとき筆者がしていたのは、その方に車いすに乗ってもらい、一部屋ずつ部屋の前まで一緒に押して回ることでした。部屋の外で待っていてもらいながら、順番におむつ交換をしていく。目の届くところにいてもらえば、転倒の心配を減らしながら、ほかの方のケアも止めずに済みます。
ただ、これは人の工夫でなんとか回していた形です。もし見守りの機械が、眠れない方の動きや起き上がりを知らせてくれたら、夜勤者はもう少し落ち着いて動けたと思います。
関わり方の基本は「理由を考える」こと
筆者が一番大事にしていたのは、生活歴と性格から、その方にとって何が不安なのかを考えることでした。近づくときは正面からではなく斜め前から、目線を下げて。否定も訂正もせず、まず相手の話に乗る。行動を止める前に、その行動の理由を考える。できることは奪わず、ご自身でしてもらい、できないところだけを支える。
同じ考え方を、ご家族にも伝えてきました。本人ができることをやるのも、介護予防ですよ、と。待つことも含めて、本人の力を残す関わりです。
こうした関わり方は、マニュアルを読んだだけでは身につきません。現場で先輩のケアを見て、同じ方に関わる中で少しずつ覚えていくものです。
「あの人にはこの声かけが効く」は、どう引き継がれるか
声かけのコツの引き継ぎは、申し送り、記録、ベテランの頭の中、一緒にケアに入って見せること、そのすべてで行われていました。そして、意外と多かったのが、休憩中の雑談からです。
ただ、現場の雰囲気が悪くなると、口頭でのいいケアの共有が少なくなります。忙しさや人間関係で余裕がなくなると、「この方にはこう言うと落ち着いた」という小さな知恵が、次の人に渡らなくなるのです。先ほど書いたとおり、不穏は直前の関わり方に左右されます。いいケアが引き継がれないことは、そのまま不穏の起きやすさにつながってしまいます。
AIに任せたいこと、人がやること
筆者がAIに任せたいのは、観察(睡眠や動き)、記録、通知、そして声かけの引き継ぎです。睡眠のリズムや夜間の動きを途切れずに残し、いつもと違う動きを早めに知らせ、うまくいった声かけを、雰囲気に左右されずに次の人へ渡す。どれも、人が余裕のないときに抜け落ちやすいところです。
一方で、その方の表情を見て、どう声をかけるかを決めるのは人の仕事です。機械が「夕方に落ち着かない日が続いています」と教えてくれても、そこから生活歴を思い出し、関わり方を変えるのは、そばにいる人です。
導入の前に考えておきたいこともあります。カメラ型のセンサーにはご家族の同意が欠かせません。デジタルに慣れていない職員が多い施設では、丁寧な研修が要ります。そして、AIが示したことをうのみにせず、最後は人が確かめることです。
まとめ:雰囲気に左右される共有こそ、機械に支えてほしい
認知症ケアの土台は関係性で、それは人にしかつくれません。けれども、関係性を支える「いい関わり方の知恵」は、現場の雰囲気しだいで細ってしまいます。観察と記録と引き継ぎを機械に支えてもらい、人は、目の前の方と向き合う時間を取り戻す。それが、認知症ケアでのAIの一番いい使い方だと筆者は考えています。
この記事はAIの補助を受けて作成し、介護現場18年の筆者が内容を確認しています。


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