毎日30分以上かかる記録業務、なんとかならないか
介護の仕事をしていて、記録業務に追われる日々を経験したことがない方はいないと思います。私自身、18年間この仕事をしてきて、「なんでこんなに書くことが多いんだろう」と感じた夜が、何百回あったかわかりません。
介護職員にとって、記録・書類作成に費やす時間は決して小さくありません。体感として、勤務時間のうちかなりの割合を記録業務に取られていると感じている方も多いのではないでしょうか。これは本来、直接ケアに当てられるはずの時間です。
特に夜勤帯では、少人数で対応しながら記録も行わなければならず、職員の心身への負担は非常に大きいのが現実です。「記録が終わらない」というストレスは、介護職の離職理由の一因にもなっています。
「AI×介護記録の自動化」というテーマが最近あちこちで語られるようになりました。今回は、AIによる介護記録の自動化とは実際どういうものなのか、何ができて何ができないのかを調べて整理しました。
そもそも介護記録の自動化って何をしてくれるの?
従来の介護記録が抱える課題
まず、そもそもなぜ記録業務がここまで重荷になっているのか、改めて整理しておきます。従来の介護記録は、以下のような課題を抱えてきました。
- 手書きやPC入力に時間がかかる:1人の利用者につき数分〜十数分の記録作業が必要
- 記録のばらつき:職員によって書き方や表現が異なり、情報共有がスムーズにいかない
- 記録漏れ・遅延:忙しい業務の合間に後回しになり、正確性が損なわれることがある
- 本来のケアに使える時間が削られる:記録に追われ、利用者との関わりが減ってしまう
こうした課題に対して、AI(人工知能)による介護記録の自動化が急速に進んでおり、現場の負担を大きく軽減する手段として注目を集めています。
主な機能は大きく3つ
「AI自動化」と一言で言っても、実際には複数のアプローチがあります。現在提供されているサービスや技術を調べると、大きく以下の3つの方向性があることがわかりました。
- 音声入力+AI変換:話しかけた内容を自動でテキストに変換し、記録フォーマットに合わせて整形してくれる
- センサー連携による自動記録:見守りセンサーや離床センサーのデータを自動でケア記録に反映する
- AIによる記録の補完・提案:入力されたキーワードや断片的なメモから、文章を自動で生成・補完してくれる
これらは技術的には、音声認識(Speech to Text)・自然言語処理(NLP)・生成AIといった要素を組み合わせて実現されています。どれかひとつで完結するわけではなく、複数を組み合わせて使うことで効果が出るイメージです。ここでは特に現場に導入しやすいと感じた「音声入力+AI変換」と「記録補完機能」を中心に掘り下げてみます。
音声入力でどれくらい変わるか
スマートフォンに話しかけるだけでテキストになる。これだけ聞くと「へえ、便利そう」で終わりそうですが、介護記録に特化したAIは少し違います。
たとえば「〇〇さん、今日の昼食は8割くらい食べてた。少し咳き込みがあった」と話しかけると、AIが
- 日付・時間の自動補完
- 「食事摂取量:80%」「嚥下:軽度の咳込みあり、要観察」などの定型フォーマットへの変換
- 関連するリスクワード(誤嚥など)の自動検出・フラグ立て
といった処理を行ってくれるものもあるようです。これは単なる音声入力ではなく、介護・医療の専門用語を学習したAIが変換してくれるという点が大きな違いです。
また、ケアの直後にその場で音声入力ができるため、「後でまとめて書こう」と思って忘れてしまうリスクもなくなります。リアルタイムで記録を残せることは、記録の正確性という意味でも大きなメリットです。
AI×介護記録の自動化がもたらすメリット
記録時間の大幅短縮
最も大きなメリットは、記録にかかる時間の削減です。音声入力とAI整形を組み合わせることで、記録にかかる時間短縮が期待できるという声も聞かれます。
記録1件ごとの時間が積み重なれば、1日の合計ではまとまった時間になります。毎日この時間が生まれれば、利用者さんのそばにいられる時間が確実に増えます。
記録の質と統一性の向上
AIが文章を整形するため、職員ごとの書き方のばらつきが減少します。「〇〇様、昼食を8割摂取。水分200ml。表情穏やか」といったように、必要な項目を漏れなく統一されたフォーマットで記録できます。情報共有がスムーズになり、申し送りの精度も上がります。
職員の精神的負担の軽減・離職防止
「記録が終わらない」というストレスから解放されることで、仕事へのモチベーション維持や離職防止にもつながります。記録業務の重さが離職理由のひとつになっているとすれば、ここを改善するだけで職場環境は大きく変わり得ます。
データ活用による科学的介護の推進
AIで蓄積された記録データは、利用者の状態変化の傾向分析やケアプランの見直しにも活用できます。厚生労働省が推進するLIFE(科学的介護情報システム)(厚生労働省のLIFEのページ)へのデータ連携もスムーズになるため、加算取得の観点からも注目されています。
実際に使えるの?現場目線でチェックしてみた
評価ポイントと気になる点を整理
現場で働く側として「これは使えそう」「これは難しそう」と感じたポイントを正直に整理してみます。
| 評価項目 | AI活用の可能性 | 現場目線の懸念点 |
|---|---|---|
| 記録スピード | 音声入力で時間短縮が期待できるという声がある | 雑音が多い現場では認識精度が落ちる可能性 |
| 記録の均質化 | スタッフによる表現のばらつきを統一できる | ニュアンスや個別性が失われる可能性 |
| リスク察知 | キーワードから変化を検出し申し送りに活かせる | AIが見逃すケースへの過信は禁物 |
| 導入コスト | 月額制のSaaSサービスも増えている | 既存システムとの連携が課題になることも |
| 職員への浸透 | 使い方が直感的なものも多い | ITに不慣れなスタッフの教育が必要 |
正直に言うと、「すべてを自動化できる」は幻想だと感じています。AIはあくまでサポートツールであって、記録の最終確認や判断は人間が行う必要があります。ただ、「入力の手間を大幅に減らす」という意味では、かなりの可能性を感じました。
特養・デイ・グループホームで使い勝手は変わる
同じ介護といっても、特養・デイサービス・グループホームでは記録の内容も量も違います。
- 特養:バイタル・排泄・食事・入浴など項目が多く、音声入力との相性が良さそう。1日あたりの記録件数が多い分、効果も大きい
- デイサービス:利用者の来所・帰宅に合わせた時間管理が重要。センサー連携より記録補完ツールが向いているかも
- グループホーム:生活全体を見守る記録が多く、「変化の気づき」をAIが補完してくれる機能が活きやすい
一律に「AI導入すれば解決」ではなく、自分たちの施設形態に合ったツール選びが重要だというのが、調べてみての率直な感想です。
現場で使える!AI介護記録ツールの例
参考として、導入実績があり現場で評価の高いツールをいくつか紹介します。あくまで一例であり、選定にあたっては必ずご自身の施設環境に照らして比較検討してください。
- ほのぼのNEXT:大手NDソフトウェアが提供する総合介護ソフト。AI記録機能やセンサー連携機能を搭載。大規模施設向けの豊富な機能と安定した運用実績が特徴。
施設の規模、既存のシステムとの連携、職員のITリテラシー、コスト感を総合的に比較して選ぶことが大切です。多くのツールが無料トライアルを提供しているため、まず小規模で試してみることをおすすめします。
ケアマネ・社会福祉士目線で気になること
記録は「証拠」でもある
介護記録は単なるメモではありません。ケアマネとして関わってきた経験からも言えるのですが、記録はケアプランの根拠であり、事故が起きたときの証拠にもなる重要な文書です。
AIが生成した文章が「自分の観察と少しズレている」場合、どこまで修正する文化が定着するか。これが実際の導入では大きなポイントだと思っています。「AIが書いてくれたからOK」という風土が生まれると、かえってリスクになる可能性があります。音声認識の誤変換や文脈の取り違えは一定の頻度で発生するため、AIが作成した記録は必ず職員が確認・修正するプロセスを組み込むことが不可欠です。
現場で18年働くなかで、1回の勤務で記録にかかる時間は30分から1時間ほどでした。AIで短くなるなら助かる一方で、筆者が怖いと感じることが3つあります。利用者の個人情報をAIに入れてしまうこと、AIのもっともらしい作文で事実と違う記録が残ること、そして記録は公的な証拠になるため、その責任を誰が持つのかということです。
AIが無かったころは、その場でメモを取る、定型文やテンプレートを使い回す、Excelや自作のツールで手間を減らす、といった工夫で記録の時間を乗り切っていました。
Excelで減らせたこと
Excelでは、表や一覧の作成が速くなり、関数で集計やチェックを自動化し、VBAで繰り返しの作業を自動化しました。ミスが減って、確認の作業も楽になりました。
実際にAIが役立った場面
筆者がAIを使って役立ったのは、文章の下書きや言い回しの相談、制度や加算の調べものの入口、ExcelやVBAのコード作り、考えの壁打ちやアイデア出しでした。
制度や加算の調べものは、あくまで入口です。最後は公式の資料で確かめています。
これまでに試したこと
筆者がこれまでに試したのは、音声入力や文字起こし、下書きの文章化、ExcelやVBAなどの自作の道具で手間を減らすこと、そしてAIを使って自分で道具を作ることです。
AIに入れる前に守っている順番
AIを使う前の決まりとして持っているのは、「何を入れないか」の線引きではなく、順番です。
セキュリティを整えてから入れる。職場のルールを作ってから入れる。この順番を守るようにしています。
「AIに仕事を奪われる」という不安への向き合い方
導入時には、「AIに仕事を奪われるのでは」という不安を感じる職員もいます。これは自然な反応です。だからこそ、AIはあくまで業務をサポートするツールであることを丁寧に説明し、操作研修を十分に行うことが大切です。最初は一部のフロアやユニットでスモールスタートし、成功体験を共有しながら全体に広げるのが効果的です。
個人情報・プライバシーの扱い
音声でケアの様子を話すということは、利用者の個人情報を音声データとして扱うということでもあります。クラウド型のサービスであれば、データがどこに保存され、どう管理されているかを確認する必要があります。
個人情報保護委員会も、生成AIサービスの利用について注意を呼びかけています(個人情報保護委員会の注意喚起)。介護事業者向けには、厚生労働省の「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」もあります(厚生労働省の掲載ページ)。国内でも個人情報保護の意識は高まっており、導入前には以下の点を必ず確認することを強くおすすめします。
- データの保存場所(国内サーバーかどうか)
- 暗号化の有無
- アクセス権限の管理機能
- プライバシーマークやISMS認証の取得状況
不明な点はベンダーに直接確認し、納得した上で導入を進めることが大切です。
「導入するとしたら」のリアルなステップ
もし今の職場でAI記録ツールを試してみるとしたら、どんな順番で進めるか、自分なりに考えてみました。
- ①現状の記録業務を数値化する:1人あたり1日何分かかっているか、どの記録が特に時間を取るかを把握する
- ②無料トライアルで試す:無料トライアルを用意しているサービスもあるので、まず1〜2人で小さく試す
- ③現場スタッフの声を集める:使いやすいかどうかは実際に使う人の感想が一番の判断材料
- ④既存システムとの連携を確認する:今使っている介護ソフトと連携できるかをベンダーに確認する
- ⑤研修と周知を丁寧に行う:操作方法だけでなく、「なぜ導入するのか」を職員全体で共有する
- ⑥導入後も定期的に見直す:最初は「補助ツール」として位置づけ、徐々に活用範囲を広げる
一気に全部変えようとするのではなく、「小さく試して、じっくり定着させる」という進め方が、現場には合っていると思っています。
まとめ:AIは「記録を消す魔法」ではなく「記録を助ける相棒」
調べれば調べるほど感じるのは、AIによる介護記録の自動化は「記録をゼロにするもの」ではなく、「記録の質を保ちながら負担を減らすもの」だということです。
改めてポイントを整理するとこうなります。
- 介護記録のAI自動化は、音声認識・自然言語処理・センサー連携などの技術で実現されている
- 記録時間の短縮、質の向上、職員の負担軽減など、現場に直結するメリットが大きい
- すでに複数の実用的なツールが登場しており、無料トライアルから始められる
- 「完全自動化」への過度な期待は禁物。確認プロセスの確保・丁寧な研修・セキュリティ対策が不可欠
- 施設形態や規模に合ったツール選びが成否を分ける
18年間現場で記録と向き合ってきた身としては、「負担を減らしながら質を保てる」だけでも十分に価値があると感じています。毎日30分以上の記録時間が半分になれば、その分だけ利用者さんの隣に立てる時間が増える。それは数字以上の意味を持つことだと知っています。
「難しそう」「うちの施設には無理」と思う気持ちもわかります。私も最初はそう感じました。でも、まず知ることから始めることに損はないはずです。介護の本質は、利用者一人ひとりに寄り添うことです。AIに任せられる業務はAIに任せ、空いた時間を本来のケアやコミュニケーションに充てる。それがこれからの介護現場が目指す姿ではないでしょうか。
この記事が、あなたの職場で一度話し合うきっかけになれば嬉しいです。具体的なツール選びや導入の進め方は、各ベンダーの担当者にも相談しながら進めることをおすすめします。
参考にした公的な資料(2026年10月17日に確認)
- 厚生労働省「科学的介護情報システム(LIFE)について」
- 個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について」
- 厚生労働省「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」の掲載ページ
この記事はAIの補助を受けて作成し、介護現場18年の筆者が内容を確認しています。


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