勤務表の自動化がある程度形になったころ、次に見えてきた課題は「同じ情報を何度も入力している」ことでした。
勤務表で誰が出勤するかを決めたあと、別の業務分担表に同じ職員の名前をまた入力する。勤務表を直したら、分担表も直す。この二重入力をなくすため、勤務表の情報を業務分担表へ自動で反映させる連携に取り組みました。今回はその過程で見えた、意外な難所の話です。
やりたかったこと
構想はシンプルです。月次の勤務表シートで各職員の出勤状況が決まれば、その情報を業務分担表側が自動で読み取り、出勤者だけを対象に担当業務を割り振る。職員ルールのシートを共通のマスタとして、複数拠点・複数業務にまたがる分担表へ展開していく形です。休職者は自動で対象から外し、職員の追加にも対応できるようにする。ここまでは、勤務表自動化の延長として素直に設計できました。
壁になったのは、勤務記号の「意味」だった
実装を進めて分かったのは、連携の技術的な難しさよりも、勤務記号が想像以上に多義的だったことです。
同じ出勤でも、「終日その業務に就く」記号もあれば、「午前だけその業務で、午後は別業務」という複合的な意味を持つ記号もあります。人間はこの使い分けを文脈で自然に読み取っていますが、機械には「この記号は終日なのか、半日なのか、半日ならもう半日は何をするのか」を一つずつ定義してあげないと判断できません。
勤務表単体の自動化では、記号を「出勤か休みか」程度の粒度で扱えば済んでいました。ところが分担表と連携した瞬間、「その出勤時間の中で何をするのか」という一段細かい意味が必要になったのです。連携とは、単にデータを流すことではなく、データの意味の解像度を上げる作業なのだと実感しました。
対応:記号の意味を一覧化するところから
対応としては、まず現場で使われている勤務記号をすべて洗い出し、それぞれが「時間帯」と「業務」の観点で何を意味するのかを一覧に整理しました。そのうえで、複合的な意味を持つ記号は分解して扱えるようロジックを組んでいます。
この「記号の意味の一覧化」は、コードを書く作業ではありません。現場の運用を知っている人間が、頭の中にある暗黙の読み替えルールを言葉にする作業です。そしてこれをやってみると、「この記号、人によって微妙に違う意味で使ってないか?」という運用のゆらぎまで見つかりました。自動化の副産物として、記号の使い方そのものを整理するきっかけになったのは、予想外の収穫でした。
連携で得られたもの
二重入力がなくなったという直接の効果はもちろんですが、それ以上に大きかったのは「勤務表を直せば分担表も追従する」という一貫性です。手作業の転記では、直し漏れによる食い違いがどうしても発生します。連携させてしまえば、情報源は勤務表一つになり、食い違いは構造的に起きなくなります。
複数のExcelを連携させる自動化を考えている方へ。技術的な接続方法より先に、やり取りするデータ(特に記号や略称)の意味が、両方のシートで本当に一致しているかを確認することをおすすめします。壁はたぶん、そこにあります。
AI介護士kaze運営者。介護福祉士・ケアマネジャー・社会福祉士の資格を持ち、介護現場歴18年。現場のリアルな課題感を起点に、AI×介護の実用性を探求・発信しています。


コメント