介護の現場も、サイバー被害と無関係ではありません
介護施設は、利用者さんの氏名・心身の状況・ご家族の連絡先といった、とても重い個人情報を、毎日パソコンや記録システムで扱っています。ここが止まれば、記録の確認も、申し送りも、請求の準備も止まります。
警察庁が2026年9月に公表した資料によると、2026年上半期のランサムウェア(データを暗号化して身代金を要求する攻撃)の被害報告は123件で、2020年下半期以降の半期ごとの集計で最も多くなりました。このうち79件、約64%が中小企業です(警察庁「令和8年上半期におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」)。介護事業所の多くも中小規模なので、「うちは小さいから狙われない」とは言いにくい状況です。
この記事では、情報システムの専門家でなくても、今日から現場でできる5つの対策と、そのまま使えるチェックリストをまとめます。
2026年の脅威ランキングも、1位はランサム攻撃
IPA(情報処理推進機構)が2026年1月29日に発表した「情報セキュリティ10大脅威 2026」で、組織向けの1位は「ランサム攻撃による被害」でした(IPA)。上位5位を、介護の現場に置き換えてみます。
| 順位 | 脅威(IPAの表記) | 現場に置き換えると(例) |
|---|---|---|
| 1 | ランサム攻撃による被害 | 記録ソフトや共有フォルダのデータが暗号化され、開けなくなる |
| 2 | サプライチェーンや委託先を狙った攻撃 | 記録ソフトの会社や保守業者、取引先を経由して入り込まれる |
| 3 | AIの利用をめぐるサイバーリスク | 利用者さんの情報を、確認なしに生成AIへ入力してしまう |
| 4 | システムの脆弱性を悪用した攻撃 | 古いOSやルーター、更新していない機器から入られる |
| 5 | 機密情報を狙った標的型攻撃 | 事業所宛てを装ったメールの添付ファイルを開いてしまう |
右の列は、筆者による「例」です。実際の被害事例ではありません。
警察の資料では、被害の原因として「機器のID・パスワードが非常に安易だった」「不必要なアカウントが適切に管理されていなかった」ことが挙げられ、バックアップはオフライン環境での保管が求められています(栃木県警察の資料)。資料が挙げる原因は、どれも基本的な管理の話です。
今日からできる、介護施設のセキュリティ対策5つ
全部を一度にやる必要はありません。上から順に、できるところからで大丈夫です。
パスワードは「初期値のままにしない・共有しない」
警察の資料が原因に挙げていたのは、機器のID・パスワードが安易だったことと、不要なアカウントを管理していなかったことです。
- ルーター・記録ソフト・共有パソコンの初期パスワードを変える
- 「全員同じID」をやめて、職員ごとのIDに分ける(誰がいつ見たか分からなくならないように)
- 退職者や実習生のアカウントを消す
OSと機器の「更新」を後回しにしない
IPAの組織向け脅威ランキングで、「システムの脆弱性を悪用した攻撃」は4位でした。更新は、穴を塞ぐ作業です。
- Windowsやソフトの更新を、止めたままにしない
- ルーターやVPN機器のファームウェアを、業者に確認して最新にする
- メーカーのサポートが終わったパソコンや機器を、使い続けない
メールの添付とURLは、開く前に1回止まる
標的型攻撃は5位、ビジネスメール詐欺は10位でした。どちらも、メールが入り口になります。
- 送信元のメールアドレスを、表示名だけでなく最後まで見る
- 「至急」「請求書」「アカウント停止」といった急かす文面は、特に立ち止まる
- 少しでも変だと思ったら、メールを開かずに、管理者や業者に電話で確認する
バックアップは、ネットにつながらない場所にも1つ取る
警察の資料でも、オフライン環境でのバックアップ保管が求められていました。つながったままのバックアップは、一緒に暗号化されてしまうことがあるからです。
- 記録・請求のデータを、定期的に外付けの保存先へコピーし、コピーが終わったら取り外して保管する
- 「データがちゃんと戻せるか」を、一度試しておく
業者と相談先の連絡先を、紙で1枚にしておく
「サプライチェーンや委託先を狙った攻撃」は2位でした。いざという時に、誰に連絡するかが分からないと、最初の一手が遅れます。
- 記録ソフトの会社、保守業者、ネット回線の業者、施設長や法人本部の連絡先を、印刷して置いておく(パソコンが開けないときにも見られるように)
- 相談先として、都道府県の「介護生産性向上総合センター」等で、セキュリティも含めて相談できる体制が、調査報告書で提言されています。対応はセンターごとに異なるため、まずは問い合わせて確かめてください(介護情報基盤の運用に向けた調査報告書)
おまけ: 生成AIを使うときの線引き
IPAのランキングで「AIの利用をめぐるサイバーリスク」は3位でした。記録の文章を整えるのにAIを使うなら、利用者さんの氏名・生年月日・病名など、個人を特定できる情報は入れない。まずこれだけ決めておきましょう。主なAIサービスの個人情報の扱いは、ChatGPT・Claude・Gemini、個人情報を扱うなら安全なのは?で比べています。
コピーして使える、介護施設のセキュリティチェックリスト
上の5つを、そのまま確認できる形にしました。印刷して、ユニット会議や管理者の見回りで使ってください。分からない項目は、空欄のままで構いません。それが、最初に業者へ聞くことになります。
パスワード・アカウント
- ☐ ルーター・記録ソフト・共有パソコンの初期パスワードを変えている
- ☐ 「全員同じID」を使っていない(職員ごとのIDになっている)
- ☐ 退職者・実習生・不要になったアカウントを消している
更新
- ☐ Windowsやソフトの更新を、止めたままにしていない
- ☐ ルーター・VPN機器のファームウェアが最新か、業者に確認した
- ☐ サポートが終わったパソコン・機器を使っていない
メール
- ☐ 送信元のアドレスを最後まで確認する習慣がある
- ☐ 「至急」「請求書」「アカウント停止」のメールは、開かずに電話で確認すると決めている
- ☐ 「変だ」と思ったメールを見せる相手(管理者)が決まっている
バックアップ
- ☐ 記録・請求データのコピーを、ネットにつながない場所にも持っている
- ☐ データを戻せるか、一度試したことがある
連絡先・相談先
- ☐ 記録ソフトの会社・保守業者・ネット回線の業者・法人本部の連絡先を、紙で用意している
- ☐ 電話する順番を、職員全員が知っている
- ☐ 都道府県の介護生産性向上総合センター等に、セキュリティの相談ができるか問い合わせた
生成AI
- ☐ 利用者さんの氏名・生年月日・病名などは、AIに入力しないと決めている
もう少し詳しく見たい方は、IPAが公開している「5分でできる!情報セキュリティ自社診断」もおすすめです。中小企業向けのガイドライン第4.0版(2026年3月27日公開)の付録3として載っていて、2026年4月21日にはExcel版も公開されました(IPA「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」)。
よくある質問
介護施設のセキュリティ対策は、何から始めればいいですか?
お金も時間もかからない順に、「初期パスワードを変える」「退職者のアカウントを消す」「業者の連絡先を紙で1枚にする」の3つです。どれも、今日中に終わります。
小さな事業所でも、狙われますか?
警察庁の統計では、2026年上半期のランサムウェア被害123件のうち79件、約64%が中小企業でした。規模の小ささは、安全の理由にはなりません。
パソコンに詳しい職員がいない場合は?
調査報告書では、都道府県の介護生産性向上総合センター等で、セキュリティも含めて相談できる体制が提言されています。対応はセンターごとに異なるため、まずは問い合わせて確かめてください。地域の支援体制の例として、IPAの「サイバーセキュリティお助け隊サービス」も挙げられています(調査報告書)。
利用者さんの情報を、生成AIに入れていいですか?
氏名・生年月日・病名など、個人を特定できる情報は入れない。施設でこうしたルールを決めておくことをおすすめします。使えるサービスや設定はサービスごとに違うので、法人の規定と契約内容も確認してください。
まとめ: 今日やるのは、1つだけ
- IPAの2026年の組織向け脅威ランキングで、1位はランサム攻撃でした
- 警察庁の統計では、被害の6割以上が中小企業で、警察の資料が挙げる原因は基本的な管理(パスワード・アカウント)の話でした
- 対策は、パスワード・更新・メール・バックアップ・連絡先の5つ
とりあえず、チェックリストを印刷して、「業者の連絡先を紙で1枚にする」だけやってみてください。
この記事はAIの補助を受けて作成し、介護現場18年の筆者が内容を確認しています。
参考資料(2026年10月16日に確認)
- 情報セキュリティ10大脅威 2026(IPA)
- 令和8年上半期におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について(警察庁、2026年9月10日)
- 令和7年上半期のサイバー空間の脅威情勢(栃木県警察本部、令和7年10月10日)
- 介護情報基盤の運用に向けた介護事業所におけるセキュリティ対策のための調査事業 報告書(MS&ADインターリスク総研、令和8年3月、令和7年度厚生労働省老人保健健康増進等事業)
- 5分でできる!情報セキュリティ自社診断(IPA)
※この記事は、公的資料の内容を確認しながら、AIの補助を受けて作成しています。


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